100日後に食われるブタを見た養豚農家の感想と分析【賛同?批判?】

100日後に食われるブタって話題になってるよね?

あれってなんなの?

養豚農家としてどう思う?

ぶたちゅう
ぶたちゅう

OK!じゃあ今回は100日後に食べられる豚について解説するね!

Youtubeで話題になっているチャンネル、
100日後に食われるブタについて解説していきます。

今回はこんな方におすすめです。

  • 100日後に食われるブタって何なの?
  • 100日後に食われるブタをみた養豚農家の意見を知りたい
  • この企画の良い点、悪い点を知りたい

今回の記事を読めば、企画の概要がわかると共に、
豚の生態の観点からもこの企画の良い点、悪い点
を理解することができます。

ということで本編に行きたいんですが、
その前に少しだけ自己紹介させてください。

書いているのはこんな人

ぶたちゅう と言います。
IT業界から養豚業界へ転職し、日々豚について勉強中。

自分と同じような未経験者での転職者や
養豚初心者の助けになりたい
と思い、
毎日の業務の中での疑問や学んだ事を纏めています。

それでは本編スタート~!

100日後に食われるブタとは

「その企画を知らないよ」という方の為に、
まずは概要を説明します。

概要

Youtubeの企画です。

生後75日目で買ってきたマイクロブタを、

100日間育ててから食べるという趣旨です。

ぶたちゅう
ぶたちゅう

マイクロブタとは成長しても30~40kg程度にしかならない豚を指すよ

目的:

フードロスを無くす為、食を考えるきっかけを作りたい。

豚を実際に飼育した後、
食べることで生命をいただく実感を意識してもらいたい。

実際の動画はコレです。
毎日豚の様子が投稿され、1日目~100日目までアップされています。

養豚場で働く者の意見

養豚場で働いている私の意見ですが、
この企画に対しては、はっきりと否定的です。

まず最初に、タイトルと企画内容から拒否反応を感じました。

この時点では感情論です。
なんとなく嫌な気分になりました。

拒否反応の理由を考えてみると、
大きく言えば二つです。

・タイトルから漂う収益化の意図

 (“フードロスを無くす”が主目的に思えない)

・企画自体の醜悪さ

では上記2つの深堀も含め、良かった点、悪かった点として分析していきます。

企画の良かった点、悪かった点

情報を羅列して考えてみると、
この企画の良かった点悪かった点は全て表裏一体です。

見る者の立場によって
どちらかが変わるものだと感じました。

従って最初に私が感じた拒否反応も、
見る方向を変えれば良い点
になります。

具体的に解説していきます。

タイトルの付け方

・良:話題性のあるタイトル

・悪:二匹目のドジョウを狙ったタイトル

話題になっているワードを狙い、
リリース後に一瞬で、ある程度の知名度を得ました。

フードロスを無くすという狙いがある以上、
話題に登らなければ仕方がありません。

その点でまずは知名度を獲得する必要があるので、
第一段階は成功していると言っていいでしょう。

ただし、タイトルは完全にパクリの為、
この時点で拒否反応がでる人は当然多いかと思います。

マイクロブタという題材

・良:一般的に食用のイメージがついている豚の中で、特にかわいい品種を採用した。

・悪:元々食用ではない品種を採用しているので食べることの必然性が無い。

“生命を食べる”を演出する為に、
・食用
・かわいい
・人になつく
といった、いくつかの条件をクリアしなければ、
視聴者に訴求する事ができません

そこでマイクロブタを選んだ点は秀逸だと感じます。

マイクロブタを選ぶ事でこのような訴求ポイントが生まれます。

・賢く、人間とコミュニケーションがとれる
・豚というカテゴリなので、一般の方から見れば食用だと認識してもらる
・家の中で飼うので親密感を演出しやすい

また、100日経っても小さくて可愛いままという点も、
食べる直前まで可愛い
事で効果的に働きます。

通常の豚の場合、100日経つと120kg程度の大きさになるので、
万人受けする可愛さではなくなってしまう為です。

対して、食べる事の必然性の無さですが、
前述のように元々食べる品種ではない事に由来します。

マイクロブタはペットとして愛玩用に改良されているので、
可食部は非常に少ない
であろうことが予想されます。

ぶたちゅう
ぶたちゅう

実際にどれくらいの量が食べられるのか推測してみます

前提知識:

通常、食用の品種を脂がのって食べごろの120kgまで飼育すると、

と畜後の可食部は生体重の約50%、50~60kg程度になります。

動画から予想する限り、
体重としては20~25kg程度です。

食用の豚で食べごろの計算であれば可食部は50%の10kg前後ですが、
食べる品種ではなく、小さい品種なので、
10kg以下
になる事は確実です。

元来、家畜の存在価値は食べ物を効率的に肉にする産肉性です。

産肉性が高いことが、家畜として発展してきた理由なのです。

今回の企画は目的が違う品種を無理やり食べている点で必然性がありません。

ぶたちゅう
ぶたちゅう

サラブレッドを飼った上で、
走らせずに肉にするようなもんだよね

100日間という飼育期間

・良:100日という期間を飼育することで、人間と豚のふれあいを描き視聴者に親近感を抱かせた。

・悪:100日間という飼育期間が単なるエンターテイメントである。

フードロスを無くす目的に照らし合わせると、
100日間豚とふれあい、かわいさを十分に分かってもらう事は必ず必要な工程です。

可愛く思える存在を食べる事で、
食べ物の大切さをアピールすることができます。

ぶたちゅう
ぶたちゅう

もし一週間しか飼わなかったら命に向き合う感覚は薄れちゃったよね

対して、100日間飼育する事が、
エンターテイメント以外の必然性がない事が悪い点だと感じます。

家畜の場合、飼育期間を長くとる理由はこれらです。

・美味しくすること
・大きくすること

ですが、大きくならないのは前述の通りであり、
“美味しく”の部分も長く飼う事でデメリットすらあります。

そもそも、小さい子豚を食べる場合、
それは子豚は筋肉の発達が未熟であり、
柔らかくて美味しい
からです。

子牛、子羊も同様です。

それに対して今回は大きくならない豚を成体近くまで飼育しているため、
柔らかいというメリットは打ち消されます

その為、100日間の飼育期間が家畜本来の飼育目的から外れ
可愛さをアピールするのみのエンターテイメント
が目的となっています。

まとめ

如何だったでしょうか?

今回は100日後に食われるブタについて解説してきました。

  • フードロスを無くす為、豚を飼育し、その後に食べるYoutubeの企画である
  • 飼育した豚は愛玩用の品種であり、食用ではない
  • 一般的には豚=食用の為、多数派へのアピールは成功している
  • 話題性、訴求効果を考えるとマイクロブタを使った事は妥当である
  • 豚の知識がある立場から見ると品種、飼育期間に必然性がないので納得できない部分がある

こういった批判記事が出てくることも含めて、
一般の方に食品ロスを考えさせるきっかけにはなります。

炎上も含めて狙っている企画だと思いますし、
その意味では非常に効果的にアピールできています。

また、適度なタイミングでインフルエンサーに絡むことで、
知名度上昇も行っており、
運用全体としてしっかり目的達成を見据えて進めている点は立派だと感じました。

個人的な感想を度外視すれば、
すごく成功している企画だと感じているので、
世の中の人が食について考えるきっかけになればいいなぁと思います。

ということで最後まで読んでいただき、ありがとう御座いました!

またよろしくお願いします~

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