![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/05/question_head_gakuzen_boy.png)
堆肥ってうんこから作られるんでしょ?
うんこがどうやって肥料に変わるの?
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう左向き.png)
OK!じゃあ今回は糞尿が堆肥になる工程を解説するね!
家畜から出る糞尿は、
そのまま廃棄するのではなく、
基本的に堆肥に変化させます。
そしてその後に販売、破棄等の処理を行います。
堆肥化するにあたって、いくつかの工程があるので、
・どんな工程があるのか
・なぜその工程が必要なのか
を理由も含めて解説していきます。
こんな人にオススメです。
- 堆肥の作り方を知りたい
- 堆肥が作られる工程と原理を知りたい
- 畜産初心者
- 自分で堆肥を作ってみたい
堆肥自体の知識やその工程を知ることで、
・堆肥の作り方が理解できる
・各工程で何が起きているかを理解できる
ので、自分でも堆肥が作れるようになります。
また、良い堆肥を作る為のポイントも紹介するので、
・会社で堆肥化の業務をしている方
・家庭菜園用に堆肥を作りたい方
にもオススメです。
ということで本編に行きたいんですが、
その前に少しだけ自己紹介させてください。
ぶたちゅう と言います。
IT業界から養豚業界へ転職し、日々豚について勉強中。
自分と同じような未経験での転職者や
養豚初心者の助けになりたいと思い、
毎日の業務の中での疑問や学んだ事を纏めています。
毎日の仕事の中で糞尿や堆肥と向き合っているので、
その経験を踏まえて纏めていきます。
是非最後までお楽しみください。
それでは本編スタート~!
1.堆肥化とは?
![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/10/fresh-g830583a1c_640.jpg)
堆肥化とは、
家畜から出る糞尿を役に立つ資源に変換する作業のことです。
糞尿には消化しきれなかった様々な栄養素が残っており、
特にその中でもリンと窒素が堆肥として重要な意味を持っています。
リン:
植物の実や根の成長に欠かせません。
リンが不足すると収穫量の低減につながります。
窒素:
植物の葉や茎の成長に欠かせません。
窒素が不足すると植物自体の成長が滞ります。
このように、どちらも植物が成長するのに不可欠な栄養となっています。
また、リンについては日本で産出できず、全量を輸入に頼っています。
![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/05/question_head_gakuzen_boy.png)
わざわざ輸入したものを雑に捨てるなんてもったいないじゃん!
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう左向き.png)
そうだね!
だから加工して肥料として再利用しているんだ!
という事で
・重要な栄養素が多量に含まれている
・日本国内では貴重な栄養素である
の2点から、糞尿は堆肥化して再利用をしています。
では次にどんな工程を経て堆肥が作られるか解説していきます。
2.堆肥作りの全体像
![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/10/quaritsch-photography-02DAiwIZ0_8-unsplash-1.jpg)
堆肥作りとはざっくり言えば
『微生物がいい感じに栄養素を調整してくれる事』です。
従って、人間が出来る事は下記3点のみです。
- 成分調整:微生物が働きやすい環境を整える
- 発酵:微生物の活動を見守る
- 製品化:微生物に感謝しつつ販売しやすい形に整える
![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/05/question_head_gakuzen_boy.png)
んん?あんまやる事なくない?
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう左向き.png)
そうなんだよ。基本的には微生物任せなんだ。
とは言え、完全に放置では当然良い堆肥はできないので、
それぞれの工程で何を行い、どうして良い堆肥になっていくかを詳しく解説していきます。
堆肥化の第一段階は、微生物が働きやすいように成分を調整してやる事です。
では何を調整するかと言うと、
・水分
・カロリー
の2点です。
![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/05/question_head_gakuzen_boy.png)
なんでこいつらの調整が必要なの?
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう左向き.png)
それはこんな理由だよ!
水分:
少なすぎると微生物がうまく活動できません。
でも多すぎると糞尿同士の隙間を水分が埋めてしまい、空気の通り道がなくなります。
空気が通らない場合は微生物が全ての糞尿にうまくアプローチできません。
その為、多すぎず、少なすぎず、ちょうどよい水分量に調整する為に、
水分を搾ったり、乾燥した資材を追加して調整します。
カロリー:
微生物のご飯なので少なすぎると栄養が足りず活動できません。
とは言え、養豚や養鶏では糞尿自体にカロリーがたっぷり入っているので、
わざわざ調整する事はありません。
糞尿が藁などの植物主体の場合(牛など)は、カロリーが足りないこともあるので、
その時は追加でカロリーの多い資材を混ぜてやります。
カロリー調整については詳しくないので詳細は別のサイトへ譲るとして、
水分調整だけ実体験を交え、もう少し詳しく解説します。
具体的には、豚舎の種類によって出る糞尿の形が変わるので、
それによってどのような調整をするかが変わってきます。
糞尿の豚舎別処理方法については
養豚場の中で一番臭い(くさい)のはどこだ?!【理由も解説】の記事で纏めていますので、こちらをご覧ください。
![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/08/アイキャッチ画像用-9-160x160.png)
・溜め糞式
簡単に言えばボットン便所方式です。
糞尿が混ざりあっており、泥水状態なので、
堆肥化をするには水分が多過ぎて微生物がうまく働けません。
従って水分を絞る調整が必要です。
具体的には凝集剤と言う窒素やリンを集める物質を糞尿に投与し、諸々な工程を経て半固体化させます。
そしてその半固体を雑巾絞り的な要領で絞ることで水分を出し、固体だけを残します。
この残った成分が堆肥の元となります。
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう右向き.png)
ちなみに、出た水分は浄化槽でキレイにする処理が必要なんだよ
・ピット式
言葉では説明しづらいのでこんな方式です。
![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/08/無うんこ題.jpg)
つまり、最初から分離された状態なので、
糞だけ集めれば調整は無しで堆肥化が可能です。
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう右向き.png)
建築費は一番かかるけど、日常処理はこれが一番手間はかからないよ!
・発酵床式
予めおがくずなどを敷いた上で豚を飼う方式です。
おがくずが糞尿を吸収してくれるので、
日々の飼育の中で自動的にある程度発酵が進んでくれるのがメリットです。
発酵床式の場合は一概にどんな処理をするかが決まっておらず、
発酵の進み具合を見て、調整を行います。
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう右向き.png)
飼育の途中でも資材の追加など、調整は行うんだよ
水分が大量の場合は追加のおがくずや木材などを入れますし、
微調整程度ならば、発酵が進んだものと混ぜられ、
水分を均一化することで堆肥化を促進していきます。
注意点として、水分率を下げる為に乾燥した資材を投入する場合、
結果として総量は増えるので十分な堆肥化スペースが必要になります。
次に最もメインの工程である発酵です。
実は発酵の工程は放置がメインです。
成分調整で微生物が働きやすい環境が整えられていれば、
あとは放置する事で自動的に発酵が進みます。
但し、微生物の活動には空気(酸素)が必要なので、定期的にかき混ぜてやり、
満遍なく空気が行き渡るようにしてあげる事がポイントです。
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう右向き.png)
これをさぼると、空気に触れている表面は堆肥化しているけど、
中の方は糞尿のまま、という状況になるよ!
発酵の具体的なやり方は堆肥舎によって違うので、
堆肥舎の種類について解説!の記事で詳しくまとめています。
![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/08/アイキャッチ画像用-10-160x160.png)
発酵の工程では熱が発生し、時には80度以上まで上昇します。
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう右向き.png)
堆肥舎の周りは湯気が立っていて暖かいんだよね!
堆肥はキレイで嫌な臭いが無い、という話は聞いた事がありませんか?
その理由は熱により殺菌されているおかげもあるんです。
温度65度以上で2日程度維持する事で病原菌や虫が死滅し、殺菌ができるわけです。
この工程で適切に殺菌ができていない場合、
堆肥として失敗作になり、こんな危険があります。
・畑に撒くと土壌汚染
・豚舎に戻すと病気蔓延
とは言え、温度が高くなりすぎると
今度は有効な成分まで壊してしまいます。
そこで、かき混ぜる行為が効果を発揮します。
実はかき混ぜる工程には、酸素を行き渡らせる事に加え、
余分な熱エネルギーを大気中に放出してやるという意味もあります。
発酵の工程で大事な部分を纏めると、
基本的に放置をしつつ、適切なタイミングでかき混ぜる事で、
空気と熱を適切な状況に保ち続ける事になります。
売る為の体裁を整える工程です。
堆肥は粉末状なので、持ち運びにも撒くのにもちょっとめんどくさいです。
そこで、持ち運びしやすい形にしてやるのが製品化の工程になります。
具体的には下記が代表的です。
・袋詰め(ホームセンターでよくある形)
・固体化(ペレット状にする。その上で袋詰めなど)
![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/05/question_head_gakuzen_boy.png)
ペレットってどんな状態??
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう左向き.png)
ドッグフードみたいな状態をイメージしてもらえれば大丈夫だよ!
実際には各社の方針や立地条件によって大きく異なる工程なので、
・袋詰めせずにそのまま売る
・取りに来てくれれば無料
・売らずに廃棄
・むしろ廃棄費用を払って引き取り
と様々な状況があります。
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう右向き.png)
2トンダンプで1杯2000円、みたいな売り方もあるよ!
3.堆肥管理で気を付けるポイント
![](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/10/absolutvision-82TpEld0_e4-unsplash.jpg)
気を付けるべきポイントとしては
・水分量を適切に保つ
・空気の流れを適切に保つ
の2点です。
これは自宅で小規模にやる場合も、
職場で大規模にやる場合も同じです。
これらの条件が揃わない場合、
微生物が働けず、発酵ではなく腐敗してしまいます。
![ぶたちゅう](https://butachu.blog/wp-content/uploads/2021/06/ぶたちゅう右向き.png)
腐敗した場合は有用な成分が出るどころか、
毒性や悪臭が発生しちゃうよ!
水分量と空気の流れさえ適切にしてやれば、
あとは微生物が勝手に発酵を進めてくれます。
出来ることは微生物に良い環境を提供する事だけですので、
彼らが気持ちよく働けるように気を配ってあげましょう。
まとめ
如何だったでしょうか。
今回は堆肥化の工程について解説をしてきました。
- 堆肥化とは有用な成分を再活用できるようにすること
- 基本工程は成分調整、発酵、製品化の3つ
- 成分調整は微生物の働きやすい環境を作ること
- 発酵は微生物が働きやすい環境を維持しつつ放置すること
- 製品化は売りやすい、処理しやすいように加工すること
- 微生物、ありがとう!
堆肥化のメカニズムを理解することが、
良い堆肥化を行う上での第一歩です。
あとは実践しつつ、水分量や空気量を調整していけば、立派な堆肥が作れますので、
自分でやってみるときには意識してみてください。
それでは、最後まで読んでいただきありがとう御座いました!
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